竹はなぜ切られなくなったのか
- かなざわ森沢山の会 広報GS

- 4 日前
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(1)一斉開花と不可逆な産業転換
竹は数十年から百数十年の周期で開花し、種子を生じた後、地上部が枯れたり地下茎まで枯れる仕組みがある。そして種や残存した地下茎から時間をかけて再生していく。これはDNAに組み込まれた周期であるとされ、日本のマダケやモウソウチクのように、海外から株分けで1個体が持ち込まれて、そこからさらに株分けを繰り返して全国に伝わった場合、同じDNAを持つ竹が全国で一斉に開花し枯死するという現象に至る。
記録された事例として、日本では1970年前後にマダケが一斉開花枯死し、竹が急激に不足したことで関連産業が著しく衰退した。ちょうどその頃、代替の人工素材が台頭。竹からプラスチック・金属などへの急転換が起こり、竹そのものの需要が落ち込んだ。その後、マダケ林は再生するが、産業は再生しなかった。国内で売られている多くの竹製品は安価な輸入品だ。家の壁の骨材として竹を格子に編んだ竹子舞を使っている家など稀だ。竹林は勢いを盛り返したが、それを活かす産業が激減した。需要のほとんどが輸入品で賄われることから、日本のマダケは収穫されず放置され、元々の竹林区分から外の林分へと侵出し、現在のような状況になっている。
モウソウチクも江戸期に株分けで移入され、それが全国に広まっていった。開花枯死は植物園や実習林等の環境で観察されている。67年という周期がいろいろな文献で見られるが、全国で一斉開花枯死したという明確な記録は今のところない。モウソウチク林の放置は、1980年代からの安価な筍が中国から輸入され始めてからだ。後は、マダケ同様。筍の生産だけでは採算が取れず、作業が大変な急斜面ほど放置され、竹が他の林分へ侵略し拡大していく。
1990年代に里山保全や雑木林保全の活動が勢いを増し、竹林も活動の場として注目されたが、地球温暖化の影響がますます大きくなり、竹の繁殖の勢いは増し、全国の竹林面積は漸増している。
(2) 現状に即して竹の需要を伸ばす
1990年代に里山保全活動が勢いづき、竹林整備に力を入れているボランティア団体も増えた。自治体や組合などによる針葉樹林や広葉樹林へ侵出する竹の皆伐が盛んな地域も増えているが、地球温暖化の影響で竹の勢いは増し、全国の竹林面積は減らず、毎年漸増している。家庭での山の恵みの需要がほとんどない状況下では竹林整備はすぐ限界に達してしまう。「暮らしと結びつかない保全」は続かない。
食料や日用品として竹を利用することは大切で、啓発や文化喪失防止の効果はあるが、日本の竹林の価値を上げ、竹林から材が運び出されて理想的な状態に竹林を維持する原動力にはなっていない。切った竹は年々うず高く積まれることになり、だんだんと作業がしづらくなるのだ。竹林経営において消費されない竹を現場で安全に焼却することは従来からなされているが、公園や市民の森という都市近郊では原則として裸火は使えない。竹をチップや粉にするチッパシュレッダーなどエンジン機器を自治体などが貸し出す動きもあるが、急傾斜地では自走できないし、柵で囲われた林の入口が狭い場合には、クレーンで吊るさない限り林内に入れることが難しい。また、粉砕時の轟音を近隣住民がどれだけ耐えてくれるのか?チップや粉末をどう活かすか?ただ堆積し風雨で散逸・流出するのに任せるのか?竹粉末を引き取って畑に入れる農家を都市近郊で探せるのか?農家近くにも放置竹林はあるだろうに、他所の物を使うだろうか?
森林管理からもたらされるバイオマス(生物由来資源)を最大限に活かすには、チップ、パルプ、炭材、土壌改良材、小規模熱利用、小規模発電など、切ったものが山からどんどん出ていくための用途が必要だ。木質発電所は至る所にある。京急グループは電気バスや葉山マリーナで必要になる電力を鉄道敷地の伐採木を燃料にして(株)タケエイグリーンリサイクル 横須賀バイオマス発電所から調達している。山口県山陽小野田市は、藤崎電機が施行した世界初の竹専用バイオマス発電所(2MW級)を運用している。今後増えることが期待される。国産竹を用いる製紙業が軌道に乗っている地域もあるが、日用品レベルにはならず需要はまださほど伸びていない。しかし、全国に広がりを見せている。一部は輸入材を使って始められ、材を出荷できる山が地域に増えるのを待っている状況だ。竹を原料としたセルロース素材の製品*も増えているが、国産材はほとんど使われていない。材生産・流通・加工・販売・消費の線がどこも同じ太さにならないと日本の竹林の保全には寄与しない。
民間に任せておけばいいのか。例えば古紙製品市場は勝手に育ったわけではない。企業の善意、消費者意識の向上だけではなく、古紙利用率目標の設定、官公での優先使用、資源回収・選別施設への支援、補助金・税制措置、業界団体を通じた標準化など、 官公の施策により、需要安定、価格安定、進む設備投資、技術洗練という好循環が生じた。国産竹の利用にも弾みをつけるための同様の施策があって然るべきだ。
それが実現し軌道に乗るまでの間も竹林の拡大は続き、生物多様性を減少させるだけでなく、自然災害の被害をも大きくしかねない。竹の地下茎はせいぜい深さ30cmほどでしか発達しない。また稈(竿の部分)や枝葉より早く枯れる。地上部が青々としていても、枯れた地下茎では土を留められない。特に放置竹林では若い地下茎が伸びにくく、地滑りの危険が高まる。竹に侵略された斜面全体が雪崩のように滑る事例が増えている。マダケの次の一斉開花枯死の際に、マダケ林のほとんどが放置竹林であったとすれば大変なことになる。手入れされた竹林は若い地下茎が多く、比較的土砂災害に強い。一斉開花枯死後も再生が速やかだという記録がある。売れるか売れないかということとは別に、竹は切らねばならない。
産業・生態系保全・災害予防を全て勘案すると、国産竹の需要が高かった時代よりも竹林面積を一旦縮小し、その上で管理が行き届く範囲を健全な状態で維持する必要があり、それが現実的だ。
(G.S)
* 竹を化学処理をして合成繊維やプラスチックを作るため、環境に良い竹利用だとは一概には言えない。

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