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ヤマユリ

〜種の発根から開花まで最低5年(2018年7月会報より)



ヤマユリの花はアジサイとともに梅雨の暗い空の下でも豪勢な花を咲かせて目を楽しませてくれる。他の草が根付かないような崖地でもたくさんの株が花を咲かせているのを鎌倉の瑞泉寺の奥で見たことがある。佐渡島北部には何度も足を運んでいるがスカシユリも強風吹き荒ぶ断崖で見られる。こういう姿を見ると、ユリは肥沃な穏やかな場所ではなくて、貧相な土壌の急傾斜地によく適応した植物なのかもしれないと思ってしまう。

我々が草を刈る現場のほの明るい林縁にもヤマユリがひっそりと生きている。花を咲かせたヤマユリは来期も環境が変わらなければまた花を咲かすのであるが、増殖していくにはどうしているのか。

花弁が散って棒のように残った部分は肥大し朔(さく)と呼ばれる種の格納庫となる。1つの朔の中に鱗のような薄い種がびっしり詰まっている。ヤマユリでは数百粒だそうだ。枯れて乾燥すると朔が裂けて、隙間から風が吹き込んで種が飛ばされたり、茎が折れて落下したりする。

地面に撒かれた種はすべてが発根するわけではない。写真はヤマユリの1つの朔の中の種子。半分はシイナ(未熟種子)だという。さらに発根発芽しても途中で枯れるものもたくさんあるわけで、自然の状態では1千粒に一つが花を咲かせるまでになるといわれている。

秋に朔が裂けて播種されると翌夏に地温が上がったことを察するまで休眠。1年後秋に発根し後に鱗茎となる小球を生ずるが翌春まで葉を生じない。2度目の春、1年半経って初めて1葉発芽。その状態で夏秋に細々と光合成して栄養を蓄える。翌年以降も一葉で数年栄養を貯めて茎を立ち上げられるように準備をする。ようやく茎立ちして複数の葉を展開できても、まだ30cm程度の丈。開花までさらに1、2年掛かる。

地下では地表すれすれにある小球が吸引根という根によって毎年少しずつ深いところに移動してゆく。数年潜り続け、その後で鱗茎から地上までの間の茎からも根を出す。そうなって初めて開花の準備が整う。

途中環境に変化があって条件が悪くなると発芽しないで休眠してしまうこともあるそうなので、種から開花まで5年というのは最低限必要な年月なのだろう。

ヤマユリは木漏れ日が当たる半日陰の傾斜地を好む。水はけと風通しの良い場所を好み、高温多湿の場所を嫌う。しかし、ユリだけを残して周りの雑草を刈り込みすぎると、虫や虫が媒介するウイルスや暑さによって害されるだけでなく、地上の種や発芽子葉や幼い茎を図らずも駆除する可能性が高くなる。結果として自生地をなくしてしまうことになる。夏の草刈りでは現場を一様に地際で低く刈る(除草する)のではなくて、強きを挫き弱きを助けるように丈の高くなる強い草を刈ったり抜いたりして抑制し丈の低めの草は生やしておく選択的作業ゾーンを計画するのでないといけない。地上部が枯れ、種の撒布後の晩秋の草刈りの際は、丸刈りで良い。

 このような選択的除草や半刈り作業によって作られる環境ではヤマユリだけでなく他の動植物にも生き残ることができるものも多いだろう。

参考:麻生ヤマユリ植栽普及会

協力:金子紀子 文:佐々木岳

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