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温暖化の陰で“本性”を現す園芸植物たち

 気候変動は、見えないところで地域の植生バランスを崩している。冬の寒さが生き物の分布を制限していた時代は遠い過去のものとなりつつある。外来の草木たちが「生来の性質」を解放する時代が来た。

 植物について言えば、気温・湿度・日照・養分などの制約要因があるとき、生来の能力(繁殖力・生育速度・発芽力)は抑制される。ところが温暖化や土地改変によってこの制約が弱まると、発揮できなかった能力が解放される。結果、もともと潜在的に持っていた繁殖力が一気に具現化する。丈や太さも大きくなり凄まじい繁殖力を見せる。

 人間が地球上を物資を積んで行き来し始めるようになってから、実に多くの植物が意図的にも無意図的にも日本に持ち込まれ帰化してきた。日本やアジア在来の野草や樹木に混じって、つつましくも見える種も多く、必ずしも危険を感じるほど大繁殖しているものは多くなかったが、最近は注意を要する草木が多くなっている。近年、近所を歩いていて、妙にカラフルな花が野生化しているのに嫌でも気付かされる。かつては花壇や鉢植えで楽しむ存在だった植物たちが、いつの間にか公園、道端、開発を免れた急傾斜地などで大繁茂して緑地を覆い始めている。植えた人々の管理不足と温暖化が重なり、園芸植物が「侵略的外来種」「要注意外来生物」と化す事例が増えている。

 その代表格がランタナ。南米原産の低木で、赤や黄、桃色の花を咲かせることから観賞用に広まった。しかし繁殖力は非常に強く、鳥が果実を運ぶことで一気に分布を拡大した。いったん根を張ると乾燥にも刈り取りにも強く、他の植物が入り込めない密な藪を形成する。今では南西諸島から関東南部まで分布を広げ、特定外来生物に指定されている。金沢区でも道路脇や線路脇、空き地、モルタル法面の割れ目、急傾斜の草地でも大きな群落を見かけるようになった。庭に植えたが、管理が追いつかず大きくなりすぎて越境しているものもよく見られる。 

 もう一つ、ここ数年で目立つようになってきたのがオシロイバナ。かつては一年草として扱われ、夏の花として親しまれてきた。ところが最近では、関東以南の温暖な地域では根茎(右写真)が越冬し、翌春また同じ株が芽を出し、さらに栄養を根茎に蓄える。しかも大量の黒い種子を落とし、コンクリートの割れ目からでも発芽するほど生命力が強い。金沢区では、道路脇の割れ目・ツツジ等の植栽枡、線路際、住宅や道路の法面、さらには急傾斜地の上部から崖下に向かって広がる様子も観察できる。

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 アレロパシー(他感作用)で周囲の植物の芽生えを抑制し、根茎によってクローンが芽吹くと、種子からの発芽よりも早く大きく育つ。繁茂しすぎてアレロパシー(他感作用)で自滅するどころか、むしろ安定した群落を保ち続けている。オシロイバナを食草とする昆虫が少ないことも爆発的な拡大の要因だろう。

 これらの植物はいずれも「美しい花」として人の手によって持ち込まれた。園芸の流行や宅地造成に伴う緑化で全国各地に植えられ、気候の壁を越えて生き延びるようになった。問題なのは、そうした変化が「静かに」「少しずつ」進むため、気づいたときにはすでに手のつけられない範囲まで広がってしまっていることだ。

 我々にできることは、身近な緑をよく観察し、変化を心に留めて、周囲に注意を喚起することだ。園芸植物を楽しむこと自体は悪ではありません。しかし「植えたら終わり」ではなく、その後どうなるかを予測して対策を講じてから育てる必要がある。地域の環境を守る第一歩は、身近な一株のふるまいを見届けることから始まり、そして広がらないように種ができる前に刈り取ったり外来種の宿根草はプランターで育てたりするなど、以前よりももっと責任ある植栽管理が必要な時代になった。

G.S.(文・写真)

 
 
 

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9月の活動報告

熱中症対策として活動時間を短縮しています 4日(木)臨時活動 自然公園拠点集合 9:30~15:00 午前:炭焼き準備。午後:会計監査 7日(日)定例活動 自然公園拠点集合 9:30~14:00 晴れ 13名参加 午前:ヒノキ林:間伐2本、材を拠点に搬入。高温のため山作業は昼まで。 午後:一旦解散後、拠点内の草刈り、枯れ木除伐。機械整備ほか。 13日(土) 臨時活動 自然公園拠点集合 9:30~

 
 
 

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