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カエンタケ(火炎茸)分布域拡大中

昔から猛毒があることで知られているからか、この菌の生態や毒成分の研究はあまりなされていないようで、未解明のことがまだ多い。

概要 初夏から秋に、広葉樹(ミズナラ、コナラ)の立ち枯れ株の根元や、土に埋もれた倒木などから発生する。子実体(地上部のきのこ)の基部は、地中の枯れた太い根に着いていて、そこに生息している他の菌と共生し栄養を得ていると考えられている。表面はオレンジ色から赤色,細長い円柱状または棒状で、土から手指または鶏冠が出ているように群生または単生する。中は白く、硬い。


分布 日本、中国、ジャワ島などに分布する。


毒成分 トリコテセン-マイコトキシン類で、紫外線や熱に強く、加熱調理程度では毒性は消えない。482度で10分あるいは260度で30分加熱すると不活化する。都市近郊の公園等では、管理者がカエンタケを除去し、子どもが触れないように対策を取っているところもあるそうだが、採取したら焼却する必要があり厄介だ。子実体のみ摘み取ったとしても本体は腐朽木の中で、また子実体を出してしまう。ロープを張り、警告札を掲示して注意を喚起していくしかないように思う。


症例 日本では6例の中毒事例が報告され、計10名の中毒患者が出ており、そのうち2名は死亡している(2003年時点)。死亡例2件の解剖所見では摂食量が約1gと報告されている。毒性は極めて強い。食用のベニナギナタタケや薬用の冬虫夏草と間違えて経口摂取した例がある。ある患者は、苦味を感じたが、薬になると思い我慢して食したという。

 経口摂取後10分前後の短時間で腹痛、嘔吐、水様性下痢などの症状が現れる。その後、口内炎、舌炎、頭痛、めまい、手足のしびれ、呼吸困難、言語障害、白血球・血小板減少、造血機能障害、全身皮膚糜爛(びらん)、肝不全、腎不全、呼吸器不全、胸痛といった多彩な症状が現れ、致死率も高い。治療は症状への対処療法で、大量の補液(点滴静注・経口補液など)や人工透析で救命した例がある。小脳萎縮、言語障害、運動障害、脱毛、皮膚剥落などの後遺症が残ることもある。

 また素手でもぎ取ったり裂いたりして子実体の汁が着いても皮膚炎を起こす可能性があるといわれる。数多ある毒キノコの中でも経皮毒を持つのはカエンタケのみとされる。

 毒がある物は大げさに伝えられる傾向がある。毒はあっても自然の生き物であり、とにかく見るだけにして触らないことだ。

 カシノナガキクイムシによるブナ科の樹木の枯死(ナラ枯れ)が東方北方に拡大するのにともなってカエンタケの子実体が発生する域が広がっていると言われている。かつては燃料その他として伐採され切株から新芽を生じさせて若返らせていたが、化石燃料に移行してから全く伐られることなく何十年も経って老齢化したことがナラ枯れの主因であろう。何十年も前の山と人の関係の変化が、何十年も経って生物分布の激変に繋がっている。今後も色々な影響が見られるであろう。


写真:撮影者 Kouchan 場所 京都大学芦生研究林 2007年9月24日 Wikipediaより

文:佐々木岳


参考文献:

Wikipedia カエンダケ

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