一般的にクヌギやコナラの伐採は紅葉期とされ、倒した後すぐ解体せず、冬は葉を付けたまま水分を芯のほうまで充分に抜く。葉枯らしという。夏に光合成で充分に栄養を蓄え紅葉期には葉からも養分を回収した一番栄養豊かな状態で伐るのが茸が良く育つとされているからだ。我々が主に活動している雑木林は公園散策道のそばであり、元を伐ったものを全てそのまま倒しておくのには向いていない。
また昨年は特別で二度の台風上陸により我々が植えたクヌギ・コナラの植林地では根の浅い株が根こそぎ倒れている。倒れる直前まで水分をどんどん吸い上げていた状態で、倒れた後に葉は全部が枯れ落ちたようで、水気の多いまま1mほどに解体して積んで乾燥させることになった。
春に植菌したが、太い原木から芽が出ていた。刈伏せ中に椎茸以外の菌が着いてしまったホダも多かった。これは乾燥が不十分であることを示している。
秋伐りに対して春伐りというのがある。葉が枯れる冬には葉からの水分蒸散が止まり、根からの水の吸い上げも止まる。2月前後の一番寒い時期に伐ると幹内部の水分が一番少なくて、伐倒後すぐ解体して植菌できるという。落葉期は地上部から根に向かって栄養分が移動すると言われているが、菌の活着も良好でキノコの発生も良いらしい。葉枯らしにできそうな木は紅葉期に伐って葉枯らしにしておき、それ以外は初春に伐る。この組み合わせで原木の水分調節や労働負担の分散が上手くいきそうだ。
またクヌギ・コナラ植林地では、椎茸原木としては太くなってしまったものを数年前から萌芽更新を目的に5年おきに伐採することにした。今後伐るものは幹も元の太さはホダとして理想的な10~15cmよりもさらに太いものとなる。太すぎるものは割って炭にするのも良いが、ドラム缶窯ではなかなかすべて捌けないだろう。50cmほどの短いホダにすることもできる。ホダ場面積を稼ぐ必要があるが、もう少し短くすれば会員が自宅に持ち帰れないこともないサイズとなる。あるいは標準の長さのまま、乾燥促進のために芯まで3本溝を刻む方法もある。縦に背割りを刻むとか、両端は切らずに残して中間に突っ込み切りでスリットを入れるなどの方法もあるが、所要時間と燃料消費、事故の可能性は上がる。3本のきざみ込みならば加工は簡単である。
「農家が教える痛快キノコ作り(2020)」農文協編を参照。
横浜市図書館所蔵。
農家林家の工夫に満ち溢れている。月刊現代農業に掲載されたきのこ記事の総集編。